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インタビュー

第3回「東京・銀座で着付け教室」

銀座には着物が合う

小西:着物って銀座に合いますよね。結月さんは銀座で着付け教室や着物販売をしていますが、銀座に来てどれくらいになるんですか?

結月:あまり数えたことはないので不正確ですが、10年以上は経ってると思います。でも、自分が何年やったとか、興味ないんですよね。わたし、いつも今と未来のことしか興味ないんです。

小西:ふーむ、なるほど。では、銀座で着物をやる意義みたいなものってありますか?

結月:そんな難しいこと、考えたこともないですね。わたしは女のひとを美しくするのが好きだから、それを仕事にしただけなんです。ただ、着物は銀座だとやりやすいのはありますね。

小西:どういうところです?

結月:例えば土日は歩行者天国になるので着物でも歩きやすい。着物でお買い物や散歩するにはいいですよ。これが渋谷のセンター街や池袋のサンシャイン通りだとそうはいきません。わたしもひとと会ったり、打ち合わせに行ったりするときは銀座から出ていろんなところに行くのですが、やっぱり銀座がどこよりも着物で過ごしやすいです。新宿もよく行きますが、ひとの密集度も高くて歩きにくいし、着物を受け入れるっていう雰囲気はないので、何と言うか銀座は着物を着ていても安心感が得られるんですよ。だからよその地区から銀座に戻ってくると、帰って来たなってホッとするんです。

小西:そういうの、ありますよね。

結月:それに歌舞伎座や新橋演舞場があるおかげで、着物を着るひとはどの地区よりも多いですしね。

小西:確かに銀座は着物姿のひとをよく見かけます。

結月:飲食店なども上品でおしゃれなところが多いので、着物でも行きやすいと思いますよ。特に結美堂で扱う着物は基本的に京都の京友禅なので、上品なものばかりですから。銀座という街のステイタスにも合ってますよね。

着物でチャンスを得る?

小西:そんな銀座で着付け教室をしている結月さんですが、生徒さんたちに着物でどんな女性になってほしいとお考えですか?

結月:まあ、着物のニーズはひとそれぞれなので、こちらから要望することはないんですが、せっかく着るなら着物を自律的に着こなせるひとになってほしいなって思います。

小西:自律的と言いますと?

結月:自分でちゃんと考えられて、着るべき時、着たい時に自分でサッと着物を着て出かけられるようなひとでしょうか。友達の結婚式に出るのに毎回ドレスだから着物にしてみようとか、動機としてはいいと思いますが、それを一過性のものとして終わらせるのではなく、着付けを覚え、着物も誂えたんだったら着物を自分のアイテムにしてしまう、つまり自分のキャラクターにしてしまえればいいと思うんです。

小西:着物って難しい印象があるので、どうしても敬遠したものになって特別の場でしか着ないって感じなのでしょうね。

結月:はい。だから、わたしは自分の生徒によく言うんですよ。ひとと差をつけるのは他人ができないことをやることだって。仕事もそうでしょうが、なんだかんだ言って、チャンスをモノにしているひとって、ひととは違うことをやってるんですよ。ひとと同じことをやっていては目立たないし、ひとに憶えてもらえず忘れられてしまう。それに同じことってありきたりということなので、価値が低いんですよ。ひとと違うことをやってチャンスが生まれる。そのチャンスってある周期で周っていて、いつも巡ってくるものじゃない。だから、それが来たときにパッと捕まえられるひとになるのがいいんです。そのために着物をマスターしていることは大きなメリットです。

小西:着物を着ていると、目立ちますよね。だからチャンスが巡ってくることも多くなる?

結月:そうなんです。それに着物は目立つけれど、いやらしくないんです。総じていい印象を持ってもらえます。

小西:第一印象、大事ですよね。

結月:そうです。着物は今、着る人が圧倒的に少ないからこそ、そして着付けは簡単ではないという世間のイメージがあるからこそ、それを克服し、習得したひとという意味で尊敬に似たものを抱いてもらえますよね。これって、すごいアドバンテージですよ。同じレベルの印象を洋服で得ようと思っても、かなりきびしいです。

小西:そこがひとと差をつけられるポイントですね。

結月:ええ。それに基本的に日本女性であれば、誰だって着物は似合うんです。さらに着物そのものが美しいから、誰でも美しくなれる。もちろん、浅草とか京都であるような変な柄や色使いのレンタル着物とかは別ですよ。ちゃんとした京友禅という意味です。

バランスが大事!

小西:着物そのものが美しいから、誰でも美しくなれるって、単純ですけど、意外な発見に思えました。

結月:みんな、きれいになりたいと思ってエステに行ったりしますよね。もちろん、お肌は大事なエレメントですが、肌だけきれいでもしょうがないですよ。肌のポイントだけ高くて、ファッションが駄目ならどうしようもないです。もっと自分という人間を総合的に見るべきでしょうね。着物は体を覆う面積が広いので、着れば肉体のおそらく80%以上は美しくなるんじゃないですか。

小西:確かに着物って、体が出るのって手首から先、そして首から上くらいなものですよね、見えるのは。

結月:そうなんですよ。これが洋服だったらそうはいきません。でも、着物は着物そのものが美しいから脚が短かろうが、胸にコンプレックスがあろうが、うまくまとまるんです。

小西:全体としてうまくまとまる?

結月:美しさってまとまりですから。一方、アンバランスが駄目です。肌はきれいでも、髪がボサボサだったら話になりません。それはバランスが成り立ってないから。それだったら肌はそこそこ、髪は普通のほうがいい。でも、着物に80%以上任せれば、あとは整えるのって、髪の毛くらいじゃないですか? 着物はナチュラルにメイクしているだけで充分にきれいですし。

小西:着物だとメイクにそんなに凝らなくてもいいですよね。

結月:凝ってもいいんですが、それもバランスです。着物の美しさを台無しにする凝り方はバランスを乱します。着物とトータルバランスが取れていればいいです。こういうと難しく聞こえますが、まあ、メイクは普通でも大丈夫ですよ、着物の場合は。

小西:そう言っていただけると、着物を自分のアイテムに取り込むのに身構えることはないですね。

着物で自分を新しくする!

結月:着付けをマスターして、あとはどんどん自分のキャラクターを作っていくことです。つまり、今の自分を否定していくってことでしょうか。

小西:否定していく?

結月:自分を変えるためには、今の自分を否定してぶっ潰さないといけません。着物で言えば、着物を着れない自分をぶっ潰して着物美人になる。新しくなるってことは、今までのものを否定して生まれ変わることです。同じことばかりしていては新鮮味がなくなって腐敗していくんですよ。日本女性は中年になると同じような「おばちゃん」になってしまう。それが年相応というモデルになってしまう。自分を否定しないで、今の延長でずっと生きているから「おばちゃん」になるんですよ。わたしはこれを不健全だと思うんですよね。

小西:う~ん、衝撃的です…!

結月:年相応っていうモデルは大多数のひとがそうなっただけの結果であって、それに自分という個性を持った人間が合わせる必要などないんです。自分は自分のやり方で生きていけるのに、思いのほかそれをやるひとは少ない。今の延長で生きていくって、わたしは怠慢だと思うんですよね、自分を新しくする努力を怠っているという意味で。それが不健全ということです。

小西:なるほど!

結月:お店だって、昔から同じものばかり品揃えして、新製品がひとつもないところに買い物に行きますか? やっぱり新製品や見たことがない初めてのものに接することができる店に行きたいと思うし、楽しいですよね。今の自分を否定して新しいことをやらない人間って、場末の商店街にありそうなビニールシートに埃がかぶって、切れかけた蛍光灯で商品が入れ替わっていない寝具店みたいなものですよ。品揃えは時代遅れなものばかりでね。

小西:変わんなきゃですね!

結月:そうです。人間は変わらなければですよ。今の自分って、生まれてからの人生で最先端であるはずなんです。だって今こそが経験が最も蓄積された瞬間ですから。でも、さらに変えていこうと試みをしていないと、その進化は止まってしまって、30年前は最先端だった、みたいになってしまう。80年代のビデオデッキのように。

小西:80年代のビデオデッキ! 使えないですね!

結月:スマホで動画が無料配信される時代にビデオデッキを使うひとはいませんよね。ところがそんなビデオデッキみたいなひとって、かなりたくさんいますよ。

小西:わかります、それ!

結月:そうならないように自分のここはもう古くなったなと思えば、そこは新しくすべきです。新しいというのは、自分が今までやったことがない試みです。それを見つけて、どんどんやるべきなんですよ。

小西:それが着物を着るということでもある!?

結月:わたしの仕事ではそうです。でも、自分を変化させる選択肢は着物だけではありません。たくさんありますよ。何も着物でなくていいから、そういうことをやったほうがいいです。ただ。着物っていうのは、さっき言ったように印象がいいし、誰でも美しくなれるし、自分で着付けできるひとが少ないからチャンスなんですよ。狙い目なんですよ。着物を着こなせるようになれば、間違いなく今までの生活とは変わるので、やってみてほしいんです。わたしはそういう意欲があるひとには本気でバックアップしますよ。

小西:それは頼もしいです!

結月:こんなことを言うわたし自身も、自分がやってきたことがセピア調になってくると、新しいものを見つけてリニューアルして生きていますからね。着物で自分を新しくして、銀座で楽しみましょうよ。そのきっかけとして結美堂で着付けを覚えてほしいですね。

<インタビュー・文 小西侑紀子>