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インタビュー

第4回「きものを着ると、キレイになれる!」

きもので背筋を伸ばす

結月:わたしはいつも言っていることがあるんです。

小西:何です、それは?

結月:きものを着ると、キレイになれる!

小西:きものがキレイですからねっ!

結月:まあ、それはもちろんなのですが、きものを着ると動きに緊張感が出て、シャキッとしますよね。

小西:わかります。背筋が伸びますよ、自然に。

結月:街を歩いていても、猫背のひとって多くないですか?

小西:多いと思います。自分も含めて… いつもちゃんとしなくちゃ、と思っているんですが、いつの間にか猫背になります。

結月:猫背って美しくないですよね。

小西:はい。だらしないっていうか、暗く見えるっていうか…

結月:猫背を治すのって大変なんです。積年のものだから。

小西:矯正するクリニックもあるくらいですから。

結月:実はわたしもものすごい猫背だったんですよ。

小西:ホントですか!? 今は背筋、伸びてますけど!

結月:本当に猫背だったんですよ。それを自分で治したんです。もう随分前ですが、あるひとのバースデイパーティーに呼ばれてきものを着て行ったんですよ。そのときに誰かが写真を撮っていて、わたしが写っているものを送ってくださったんです。その自分の姿を見て赤面するというか、激しい自己嫌悪にとらわれたんです。きもの着て猫背でいる姿って、こんなにも醜いものなのか!って。

小西:それまでは自覚がなかったんですね?

結月:猫背という認識はありましたよ。でも、自分の姿をあまり見たことがなかったんです。だって、座っているところなんて、自分では見えないですから。

小西:それを写真で見てしまった!?

結月:そうなんです。こんな醜い姿で人前に出ていたのかと思うと、過去のすべてを消去したくなりましたよ。それでその日から猫背を治すよう、いつ何時でも背筋を伸ばすようにしたんです。

小西:それで治るものなんですか?

結月:簡単じゃないです。積年のものですから。でも、睡眠中も背筋を伸ばす意識をしたし、便座に座るときもピシッと背筋は真っ直ぐ。常に背筋を伸ばすことを心がけました。バーのカウンターでお酒を飲むときもです。

小西:便座で背筋を伸ばすのもすごいですが、お酒で酔っ払ったときも真っ直ぐなんですか?

結月:まあ、わたしはあまり酔っ払うことはないんです。たくさん飲んでもそんなに乱れないです。だからよく全然酔わないんですねって言われますよ。ひとより飲んでるのにシラフと変わらないので。でも油断すると背筋が丸くなるから、背筋真っ直ぐでグラスを持つことをいつも意識しました。そしたら、バーテンダーから、すごく姿勢がいいんですね、なんて言われたり。だって、お酒飲むときはみんなだらしなくなりますからね。

小西:それで猫背はどれくらいで治ったんですか?

結月:あまり憶えていませんが、2か月か3か月かかった気がします。猫背は癖になっているので、気を抜くと元に戻りますからね。だから、無意識に猫背になっていたことに気づいた瞬間に、「いけない、いけない!」とピシッと背筋を伸ばす。その繰り返しですよ。

小西:その執念がすごいです。

結月:それほど猫背である自分の姿に絶望したんですよ。こんな醜い自分は抹殺しなければと思いました。

小西:それで今のように猫背は治ったんですね。

結月:ええ。でも、最初は腰痛がひどかったです。実は猫背のときから腰痛があって、ぎっくり腰まではなったことはありませんが、ちょっと危ないなってときはよくありました。だから、猫背ってやはり良くないんですね。そんな猫背を矯正すると、今までと違ったところが痛くなったりしました。曲がっているのを真っ直ぐにするのですから、今まで使っていなかった筋肉を使ったんでしょうね。

小西:痛くなってやめようと思わなかったですか?

結月:それはないです。だって、猫背である自分の姿は、自分がこの世で最も嫌悪するものだったので。でも、腰痛は次第になくなり、猫背が完全に治ってから腰痛はまったくないですよ。

小西:姿勢は大事ですね。

結月:美しくないばかりか、貧相に見えますよね。なんか運が悪そうっていうか。前かがみになるせいで、考え方もネガティブになります。わたしは実業家とか、実績を上げているすごいひとなど結構会ったことがあるのですが、そういうひとたちに猫背はひとりもいませんよ。

小西:やっぱりそうですか。

結月:ですから、運が良くなるためにはまず姿勢なんですよ。

小西:言えてます。私も早く治さなきゃ…

結月:あと、きもののことを言うと、猫背だときものは着姿が美しくないばかりでなく、崩れやすいです。お太鼓の枕が曲がった背で隙間が空いてしまうので。さらに猫背は前かがみになるので、衿元が広がります。そうすると抜いた衣紋も前に来るので全体的にだらしなくなりますね。猫背でいいことなんてひとつもないです。

小西:大変でも治さなきゃですね。

結月:わたしができたんだから、誰でもできますよ。とにかくいつ何時でも背筋を伸ばすように意識する。便座の上でも眠っているときも、お酒飲むときもです。

小西:そして、着物姿もきれいになって、運も良くなる!

結月:はい。洋服でも姿勢がいいほうがいいですしね。でも、きものは帯があるので、コルセットだと思って猫背を矯正するにはいいですよ。きものが崩れれば、着付けが原因ではなく、自分の姿勢という根本が駄目なんだと気づきますし。

小西:では、きものを着るとキレイになるというのは、背筋が伸びて見栄えが良くなるということですね。

きものでメイクがうまくなる!?

結月:まだまだあります。まず、メイクをちゃんとしようと思いますよね、きものを着ると。

小西:確かに気合は入ります。

結月:メイクのことは前回お話しましたが、きものとバランスが取れたメイクをするといいです。気合が空回りせず、バランスを取ること。たまに見かけるんですよ、きもの着て、頑張ってメイクしたのはわかるけど、方向性が別のほうに行ってしまって、激ヤバなメイクになっているひと。メイクのセンスと技術がないなら、普通でいいんですよ。

小西:ああ、私、あまりメイクがうまくないのでヤバい系かもです。

結月:でも、わたしはきものを着て、気合入れすぎて別のものになってしまったひとのことも好きなんですよ。だって、それはきものを着たうれしさがあるからです。最初は誰でも失敗しますから、いいんじゃないですか。きものを着る回数を増やして、メイクが少しずつうまくなればいいだけです。

小西:そういってもらえれば、気が楽になります。

結月:きものがきっかけになってメイクに目覚めるのもいいですね。キレイになるステップです。普段着の洋服ばかり着ていては、メイクに目覚めることはなかなかないでしょう。

小西:着るもの相応のことしかしませんよね。

きものには夜会巻きがいい!

結月:それから髪の毛です。きものは抜いた衣紋を見せるのが魅力なので、きものを着ると髪はちゃんとしないとって誰でも思いますよね。

小西:きものにはどんな髪型がいいですか?

結月:よく訊かれますが、ズバリ、夜会巻きです。夜会巻きが最も美しいです。

小西:ああ… 苦手です、うまくまとまらなくて…

結月:そうですよね。だから、結美堂では昔、「夜会巻き講座」もしました。コツを覚えると自分でもできるようになります。間違っても美容院でキャバ嬢みたいな髪型にされて、わざわざお金を払ってほしくないです。

小西:成人式とかすごいですよね!

結月:あれは美容師が駄目なんです。美容師がきもののことを知らないから。そして、振袖にはああするものだとすら思っている。とんでもないです。美の教養が不足しすぎです、今の美容師は。きものに柄がたくさん入っているのだから、髪はシンプルで美しく、そして清潔な夜会巻きがベストです。余計な飾りは要りません。

小西:なるほど、美の教養不足ですね!

結月:ひとをトータルで美しくする視野がないんですよ、美容師には。髪しか見てない。きものを着たひとを全体のバランスを考えて美しくする、その一部に髪がある。髪がひとよりも、振袖よりも出しゃばってどうするんですか?って言いたいです。

小西:バランスですよね。

結月:それにキャバ嬢風の髪って、趣味が悪いですよ。それは職業としてのキャバ嬢を悪く言っているのではなく、キャバクラというシーンならあの髪型が相応だろうけど、晴れの日の振袖や訪問着に水商売の髪型はどう考えても場違いでおかしいですよね。美容師はそういうところがわかってないんです。

小西:う~ん、痛快です!

結月:だから、きものには夜会巻きが一番上品で美しいのだから、夜会巻きくらい自分でできる女子力はほしいです。

小西:うう、耳が痛いですが、夜会巻き、がんばります!

結月:つまり、きものを着ることによって、そうやって自分が高まっていくんです。それがキレイになるエネルギーですよ。安物ばかり身につけていると、自分が高まらないのは当たり前なんです。いいきものを着る意味は、そういうところにもあると思います。もっと言えば、リサイクルとかレンタルのきものでも駄目です。身銭を切って、いいきものを自分のために買って、自分を高めなきゃ。人の手垢がついたきものを安く買ったり借りたりして、どうやって自分が高まりますか。

小西:女子力を高めるには自己投資が必要!?

結月:そりゃそうです。自分を安上がりにせず、自分にはきっちりとした投資をすべきだって思いますよ。

<インタビュー・文 小西侑紀子>