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インタビュー

第6回「結美堂が銀座からアキバに!!」

小西:久しぶりですね、結月さん!

結月:そうですよね。ちょっとサボりすぎたわ。あと、実は移転のことでやることがありすぎて時間がなかったんですよね。

小西:アキバですものね!

結月:そう。秋葉原駅から歩いてだと10分弱かな。昭和通り沿いで、アキバの中心ではないけど、まあ、アキバって説明してます。わかりやすいので。あとは御徒町とか、一番近い最寄駅は日比谷線の仲御徒町なんですよ。

小西:秋葉原と御徒町のちょうど中間あたり?

結月:そうですね。たぶん。わたしもまだあまりこのあたりを散策してないからわからないんですよ。なかなか落ち着かなくて。でも最近、ようやく落ち着いてきた。だから、小西さんを呼んだ。

小西:銀座には13年間いたんですよね!

結月:そう。13年間。思えば長かった。だって、13年って、小学校に入学した子が大学1年生になるまでですよ。本当に長い。

小西:でもどうして銀座を離れることになったんですか?

結月:まあ、簡単に言うと、テナントの契約が満期になったから。もちろん残ろうと思えばまた契約すればいいけど、新しいことができないから、もういいやって思った。それまで自分が銀座を離れるなんて思いもしなかったのに、「もういいや」って思った瞬間に銀座への思いはゼロになっちゃった。

小西:すごいですね、そういうのも!

結月:これって、長年付き合った彼氏を別れるのと同じですよ。相手に大きな不満があるわけじゃないけど、「もういいや」って思ったら、もうそれ以上付き合えないでしょう? そしたらそれまで付き合ってきた年月なんてどうでもよくなる。髪もバッサリ切ろうって気持ち。

小西:ああ、そう言われるとわかります。

結月:ちょうど契約のことがきっかけになったんですよ。移転しようって。でも、最初は銀座で物件を探してたんです。ところが全然ときめかなかった。今までの延長でしかないって気がして、新鮮味がなかったんですよ。そりゃ、13年間もいれば、興味があるものなんて何も残ってない。だから銀座シックスができたって聞いても、一度も行ってない。見もしてない。興味ないから。

小西:そうなっちゃうんですね。でも、銀座って素敵だと思うけどな…

結月:東京にいたら、わざわざ東京タワーなんかに上らないでしょう? そんなものですよ、毎日いたら。あとは、銀座という街自体がつまらなくなった。らしさがなくなってって気はします。

小西:ユニクロができたりとか?

結月:ユニクロが悪いってわけじゃないけど、そういう傾向にあるっていうのは言えると思う。わざわざ銀座でなくても手に入るものが多くなりましたよね。わたしが銀座に来た頃は、まだ銀座ってキャラがしっかりしてたんです。

小西:それは言えてるかも。

結月:まあ、そんなことも重なって、同じところにずっといても新しいことできないなって気づいたんです。マンネリ化してしまって。だから、これはっていうアイデアや企画も思いつかなかったんですよ。それが辛かった。そんなときに契約満了の話になって、もう銀座にいても駄目なんだなとなった。

小西:で、アキバに?

結月:アキバって、わたし、まだ数度しか行ったことがないんですよ。でも、明らかに今までの自分が知らないものがあるのは間違いなかったので。そこでアキバから上野までのエリアで不動産屋に物件を探してもらったんです。

小西:それでここになったんですね?

結月:いえ、厳密に言えば、ここしかなかった。ほら、わたし、着物のほかにバイオリンも売ったり教えているでしょう? そうなると音が出るから音を出していい物件となると少ないんですよ。そして、ピアノはいいけどバイオリンはダメ、みたいななんだかよくわからない決まりがあったりしてね。

小西:バイオリンよりピアノのほうが音が大きいですよね?

結月:そう。不動産屋さんもそれを管理会社に言ってくれたらしいんですが、楽器可だけどピアノだけって規約に書いてあるからって、役所みたいに話にならないって。それでバイオリンOKなのはここしかなかったんです。でも、広さもちょうどよかったし、わたしもこだわりがなかったので、じゃあ、ここでいいですって。

小西:そうだったんですね。でも、アキバに近くて予定通りって感じですね。

結月:アキバと着物ってあまりないマッチングだからおもしろいかもですよ。コスプレの忍者みたいな着物はあっても、本格的な京友禅の着物ってアキバにはないと思うので。文化が生まれる地盤って、異種と異種が融合する場所なんですよ。典型的な場所がニューヨーク。いろんな人種がひしめき合って、価値観の異なるものが混在するからおもしろい発想が出てきて、文化が生まれるんです。だから、アキバに着物も何か文化が生まれるかもです。

小西:銀座ではできなかったことですね?

結月:はい。銀座って、ステレオタイプなイメージが強いし、銀座にいるひとも訪れるひともそれを共有しようとするので、異物なことってやりにくいんですよ。昔の銀座みたいにその「らしさ」がおもしろければそこに乗っかればいいんですが、今の銀座にそれほどの魅力がない。なのに実体のないイメージが街を牛耳ってしまって、新しいことができないんです。そういう息苦しさは感じていましたから。

小西:アキバでも今まで通り着付け教室はなさるんでしょう?

結月:はい。それはもちろん今まで通りに。

小西:では、これからですね、新しい結美堂は!

結月:そうですね。まあ、ぼちぼちやりますよ。まだ秋葉原を散策できてない状態なんで…

<インタビュー・文 小西侑紀子>